デクの祈りうた

キリスト教徒の祈りを、詩とエッセイにこめて

誕生日

六歳になるんだよ!

あと一週間なんだよ!

―孫娘が電話口ではずんでいる

そうか、誕生日ってゴムまりみたいにはずむんだ!

 

 

ぼくのはじめての記憶は五歳の夜

チチとハハの別れ話を寝床できいた夜

その後、誕生日は何度もきたけれど

弾んだ記憶はない みたい

 

 

息子の誕生日におよめさんがいった

―夫のお父さんになった日 おめでとうございます!

誕生日が二度きたようで

胸がちょっとふくらんだ

 

 

地震のその日に亡くなったひとがいる

地震のその日に生まれたひともいる

どちらも愛(いと)おしい

どちらもかみさまの手のひらにくるまれた命 

 

誕生日はよろこびで満たしたい日だ

にっぽんが激しく揺れた日に生まれたひとよ

きみはうつむかないで胸張って生きるだろう

一杯愛され、いっぱい愛し 命に感謝して生きていくだろう   明日へ

 

 

5 

ずっと前のこと

近くに住んでいるぼくを 母が訪ねてきた

手にはお寿司の折詰

 ―おめでとう 誕生日だね!

忘れていたぼくは ドッキリのお寿司を受け取ったのだった

 

すこし前のこと

仕事中のぼくの部屋へ 子どもたちが入ってきた

ハッピーバースデーをうたいながら

―おめでとう、おやじ 誕生日だね!

忘れていたぼくは ドッキリの笑顔を受け取ったのだった

 

 

―毎日が誕生日だよ、すてきだねえ

映画のセリフが届けてくれたことば

毎日 世界のどこかで産声があがり

毎日 世界のだれかが拍手で迎えられている

  

皮肉屋のこころは こんなことばも感じてしまう

―毎日がお葬式だよ、かなしいねえ

世界のどこかで息が止まり

世界のだれかの胸がしめつけられる 毎日

 

 

たった一人でも 世界のどこかで 

不幸の衣に身をおおわれたひと 

そのひとには誕生日は苦い日だ

―傷ついた誕生日だよ、さびしいねえ

 

独りでむかえたさみしい誕生日 

でも 数えたらそれほど多くない

友だち、恋人、妻、子どもたち、孫たち だれかが隣りに居てくれた

―誕生日だね ウエルカムの日だよ

 

 

新しいことを始めようと気負わなくていい

昨日までのことをコツコツとつづけよう

直そうと決めたことは今日から努力しよう

祈りで始めよう 祈りで終えよう

 

ものごとを深刻にしてしまわない

喜んでいるひとをねたまない

愛することを学ぼう もっと

神に心をうちあける その時間をふやそう

 

 

たとえば 朝 妻と顔をあわせるのが照れくさい日

たとえば 一年の短さ長さを感じる日

たとえば 新しいワイシャツを着たくなる日

たとえば 自我の執着はもう棄てようと決意する日

たとえば 孫からのメールを何となく期待する日

たとえば 同期のともだちの笑顔が浮かんでくる日

たとえば 感謝の思いをふくらませたい日

 

そして 言葉に愛が宿ることを祈る日

 

 

10

妻といっしょに齢をとる

難しいことではないと思っていた 五十代までは

ふたりとも年ごとに萎えていく身と知ったいま

こう言おう―妻といっしょにアリガタク齢をとろう

 

 

 

 

◆言葉に愛を宿したい。

◆ご訪問ありがとうございます。